明星学園中学校 副校長 堀内先生 繁田先生 新坂先生
今回お話を聞いたのは2018年に修学旅行で陸前高田市に訪れて、民泊を実施した東京都の「明星学園中等部」の先生方。明星学園中等部が修学旅行先として陸前高田市に訪れたのはこの年が初めてです。このインタビューでは、先生方がどのような想いから陸前高田市に訪れることを決めたのか、担当教諭の繁田 真爾先生、学年主任の新坂 ◯◯先生、副校長の堀内 雅人先生にお話をお伺いしました。
—–まずは修学旅行先として陸前高田市を選定された理由やきっかけを教えてください。
——陸前高田市に訪れることを決めた後、学校ではどのような話し合いが行われたのですか?
(新坂先生)まずは職員の中で、学年会、全体での職員会議で話し合いを持ちました。一番時間をかけたのは保護者の方々に説明をするところです。保護者の方々からすると、食べ物や放射能の影響はとても心配な部分。「それは大げさだよ」で済む問題ではないですからね。
(繁田先生)陸前高田市と東京の放射能レベルは実際、あまり変わりありません。しかし、どうしても東北と聞くと喚起してしまうイメージがあるのも事実です。それは一概に否定できるものではありません。そこで、修学旅行の事前学習は意識して、丁寧に行いました。マルゴト陸前高田のスタッフである永田 園佳さんに学校に来ていただいたり、放射能リテラシーを学ぶために専門家の方にお越しいただいて、お話を聞いたり。生徒だけでなく、保護者の方々にもご参加いただいて、長い時間意見のやり取りをしましたね。
(堀内先生)永田さんがお話に来てくれたことが特に大きかったと思います。生徒は「陸前高田市に民泊するよ」と伝えられても、いまいちどんな場所なのかイメージはしづらい。でも、永田さんがいらして、自身の学生時代の話や陸前高田市の今の状況をお話されたことで、生徒たちが陸前高田市のことを身近に感じられるようになったと思います。そこから生徒たちの気持ちもぐっと入り始めましたね。
——陸前高田市に修学旅行に訪れた生徒たちにはどんなことを学んでほしいと考えているのですか?
(堀内先生)中学生くらいだと親との関係、友達同士との関係など狭いコミュニティーの世界の中で切実な悩みを抱きながら、生活していることがほとんどです。その生徒たちに、外の世界を見てほしいという想いがあります。そのために民泊を通して、先生のいない場所、親のいない場所、そして普段住んでいる場所から遠く離れた土地に訪れて、陸前高田市の方々のような「真剣に生きている大人」と出会うことがとても重要だなと感じています。
——「真剣に生きている大人」について、もう少し詳しく教えてください。
(繁田先生)陸前高田市の方々が語る言葉には、強さというか、哲学と思想があるんですよね。いい加減なことを言っているんじゃなくて、「これは伝えたい」という強い思いが伝わってくる。それはすごく辛い経験が背後にあって、出てくる言葉だからご本人にとってはいいことではないのかもしれませんが、そういった話こそ、生徒たちがしっかり耳を傾けて、聞いておくべきことだなと思います。
(新田先生)生徒たちにとって、目の前で話をしている人が経験していることを聞くのはとても印象に残るんだと思います。「こんなに明るく元気な人達がそんなに怖い思いをしたのか」っていうのはものすごく胸に響く。生徒たちは純粋だからそういうことをしっかり感じ取っていると思います。
(繁田先生)やっぱり、そういう震災の復興ということと同時に、生徒たちひとりひとりの生き方。そういう真剣に生きている大人とか、いろんなものを抱えている現地の人たちと会うといろいろなことを考えさせられると思うんですよね。今回の語り部さんの中でも「今まで不平不満を言っていたけど、ただ生きているだけで幸せだってことに気づけた」とか。やっぱりそういうことを聞くと、子どもたちも自分のことを振り返らざるをえない。「本当に今のまま、なんとなく生きているだけでいいのかな」っていう大きな問いを持って帰ると思うんですよね。陸前高田市に訪れることで、生き方への真剣さと出会って、自分の生き方そのものに形を与える重要なきっかけを掴むことができたんじゃないかなと思います。